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不登校の娘をもつ母のひとりごと
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ユウには主治医がいる。
メンタルクリニックの先生だ。
今回の入院もその先生に勧められてのこと・・・。

男の先生で、今をときめくマツケンサンバの振付師のマジーによく似ている。
とにかく、とてもすごい先生である。
初めて受診したとき、ユウと顔を見合わせて
「なんでもわかるんだね・・・さすがプロってかんじ・・・」
と感心してしまったことをよく覚えている。

「母子手帳を見せてください」
先生は言った。
中学にもなって、いまさら母子手帳というのも、おかしな話だなと思いながら、もうぼろぼろになってしまった手帳を先生に渡した。
ひとしきり読むと
「出産時にすぐ泣いた?」
とか
「ひとりで服を選ぶようになったのはいつ?」
とか
他愛のないことを聞いてくる。

「泣きませんでした、へその緒をまいてたので・・・」
とか
「自分で選びませんね~いつも適当で、ママがこれを着たら?って言うことが多いです」
とか
いったいなんの関係があるのだろうと思いながら返答しつづけた。

その間、ユウはずっとだまっていた。

先生はユウにむかって言った。
「しばらく前に眠り姫になったことない?」
ユウはわけもわからず
「眠り姫?」
と答えた。
初対面の人にとんでもなく緊張するユウの気持ちは、突拍子もない質問でほどけたらしい。
そこからは饒舌になった。

「眠くて眠くてず~っと寝てたことあるでしょ?」
「うん、ある・・・ちょっと前・・・」
「今は夜、寝られなくない?」
「寝られない・・・」
「だよね~人としゃべるのイヤでしょ?」
「うん」
「疲れるんだよね?」
「うん」

しばらくユウとだけしゃべって、先生は急に私のほうにむかってこう言った。
「これじゃ学校いけませんよ」

そのとき、私は母子手帳をだしただけで、不登校のことはひと言もいっていなかったのだ。
ユウも私も、あまりに驚いて、目の大きさが二倍くらいになった顔を見合わせてしまった。

「ひとやま越してしまっていますね、おかあさん・・・。眠くて眠くて・・・のときが最初のころの症状です」
「はぁ・・・」
「彼女は人と会うことに緊張してしまうんですね、今。ちょっとだけ、お薬を使いましょう」
「はい・・・」

その日は緊張をほぐすという朝晩2回飲む薬と、睡眠導入剤のような寝る前に飲む薬をもらって帰った。
2006年3月9日のことだった。
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